2004年06月20日

サイバー空母「ヤマト」

コスミック文庫/2004年6月20日初版発行/933円/ISBN4-7747-0780-5


サイバー空母「ヤマト」


自衛隊の空母型揚陸艦ヤマトは、外国の非難をかわすために揚陸艦といってはいるが空母。この新造なったばかりの原子力空母ヤマトは搭載機と共に太平洋戦争末期のマリアナ沖海戦へタイムスリップしてしまった。完成直後のため、武器弾薬はほとんど空に近い状態で、搭載機も8機のF-1と1機のSH-60Kのみ。はたして彼らはどのような運命を辿るのか?

同名の新書判全3巻をまとめた文庫でした。

第一部 激戦渦巻く太平洋戦線へ



タイトルからしてやばそうな本書。意外なことに第一章も半ばまではヤマトは連合艦隊に合流しません。タイムスリップものだと海戦の序盤から介入するのがお約束ですが、なんと、翔鶴も大鳳も沈んでからの合流。大幅に戦力を減じたところへ加わるということで、ヤマトの活躍が栄えるように狙ったんでしょうか。よくわかりません。敵の軽空母に対艦ミサイルを8発ずつ撃ち込んだりして、「おいおい、補充の効かないものをそんな贅沢に使うのかよ」と先を読むのが怖くなるかも……。

それにしても、索敵機として零戦や晴嵐を使ったり(敵はF6Fで索敵していたりする)、大鳳が搭載機数が80機前後で少ないとか思わず突っ込みたくなる部分が散見されるのが……やっぱりねという感じ。

第二部 地獄の捷号作戦…!



おそらくこれが2巻だったのだろう。マリアナ沖海戦で数隻の敵空母を撃破したもののマリアナを奪われた帝国海軍。フィリピンから攻めてくる敵艦隊を迎え撃つために出撃します。驚くべきことに、撃沈された翔鶴がなぜか前線に登場しているという展開が待っていました。どの艦を沈めたか確認もせずに適当に執筆しているわけですね。いやはや、何とも信じられません。

沖縄が空襲され、台湾にも敵機動部隊を発見すると、小沢提督はただでさえ劣っている戦力を二分して両方を相手にしようとします。そりゃ無理だってば。なんという無能な描かれ方か……。「ここは各個撃破だろう」と誰もが突っ込みを入れそうな展開に驚かされます。F-1が2機撃墜され、長距離対艦ミサイルを使い果たしたところで第二部が終了。そろそろピンチになってきました。この先どのような無茶が待っているのか違った意味で期待してしまいます。

この章でも愕然とさせられる記述が……。

電子戦に勝つには、敵のコンピュータを狂わす必要がある。それがコンピュータ・ウイルスだ。


敵とネットワークを接続するような間抜けな設計はありえない。って、それ以前にどうも電子戦を全く理解していなさそうです、はい。

第三部 日米決死の硫黄島攻防戦



これが3巻だったんだと思いますが、サブタイトルの割にフィリピン方面での戦いが半分ほどを占めている状態。なぜか急に練度が上がったかのように大活躍する海軍航空隊に驚きを感じます。レイテ沖、硫黄島沖ともに、ヤマトのレーダーを頼りにして海戦で勝利を収めていく日本海軍。ほぼ一方的となる戦いが描かれるので、とにかく痛快に勝つ話なら何でもいいって人にはたまらないのかもしれませんけどね。対艦ミサイルもなぜか残弾が復活して攻撃に使っていたし。もう無茶苦茶です(笑)。

で、途中で伏線として張られていたのかと思った信濃や雲龍クラスは、結局最後まで登場せずに読み終えてしまいました。もしかして、忘れ去られちゃっていたんでしょうかね。修正・加筆して文庫へするなら、謎の復活をしている翔鶴(沈めたのを忘れた≒プロットも作らずに執筆したんだろうけど)をそれらの艦に直しておけばいいのに。それともこれでもおかしな部分を手直しした結果でオリジナルの新書判はもっとスゴかったんですかねぇ……。
posted by 伊織舞也 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 稲葉稔